◆半数以上の基金が赤字!
世間を騒がせているAIJ投資顧問による「年金消失問題」を受け、厚生労働省が行った厚生年金基金(以下、「基金」)に関する調査によると、全578基金のうち314基金において、年間の給付額が掛金(保険料)を上回ったということです(2011年3月期)。
また、将来の年金支給に必要な積立金が10年未満になくなってしまうおそれのある基金が16もあり、今後、積立不足による企業の倒産なども出かねない状況です。
◆積立不足の要因は?
積立不足の背景には、団塊世代の大量退職による年金受給者の増加があります。
また、現役社員が年々減少傾向にあり、支給総額から掛金総額を引いた差額は約1,300億円(2010年度)にも上っており、今後はさらに拡大することが考えられます。
◆運用利回り設定の問題点
将来の年金給付原資を確保するために必要な運用利回りについて、大企業においては一般的に「2〜3%程度」となっているようですが、中小企業が中心の基金では、約9割が「5.5%」といった高水準に設定されているようです。
こうした基金の中には、業績低迷により掛金を増やせない状態にあるケースが多くなっています。
◆運用難をどう乗り切るか
約4割の基金では、積立金について企業年金分がまったくないうえに、公的年金分(代行部分)も不足しているとのことです。
財政悪化に対処するために退職者が受給している企業年金の減額を行うことも考えられますが、受給者の「3分の2以上の同意」が必要となるなど手続き難しくなっています。
そこで、厚生労働省では、企業年金の減額を認める要件を「過半数の同意」に下げる案を検討しており、現役世代への過度の負担を防止することを考えています。