◆約1,400万人が加入する後期高齢者医療制度
厚生労働省は、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」に代わる、新たな高齢者医療制度の骨格を固めたそうです。
現在、約1,400万人が加入している後期高齢者医療制度は、2012年度末に廃止とし、そのうち自営業者や無職の人など8割程度の人は、原則として市町村が運営する国民健康保険(国保)に、残りの2割程度を占める会社員やその扶養家族らは、勤務先の健康保険組合や協会けんぽなどに移行させるとしています。
◆後期高齢者医療制度への批判
後期高齢者医療制度がスタートしたのは2008年度で、75歳以上をひとくくりとする仕組みのため、「年齢差別」との批判が強く、厚生労働省がこれに代わる新制度を検討してきました。
新制度の導入により75歳以上の人が国保に移る際にも、現行の保険料の負担割合を維持するとしていますが、高齢者が集中する国保の財政悪化が予想され、支援策が検討されています。
◆新制度の基本的な骨格
新制度では、地域保険は国保に一本化するとしています。加入する制度を年齢で区分することなく、高齢のサラリーマンや被扶養者は被用者保険に、それ以外の人は国保に加入となります。国保に加入する高齢者については、都道府県ごとに標準保険料を定めるとしています。
これにより、世帯主以外の高齢者は保険料の納付義務がなくなることとなり、たとえ保険料負担が増えたとしても世帯全体で軽減判定が行われるので、負担増が解消されます。働いている高齢者については保険料を事業主と折半することになるので、扶養家族の保険料負担はなくなります。
◆今後の制度設計に注目
なお、2年ごとに保険料が上がる現行制度の仕組みは廃止とし、75歳以上が支払う保険料負担の増加率が現役世代を上回らないよう、都道府県ごとに設置する「財政安定化基金」を活用するとしています。
今後も増加が見込まれる医療費問題について、現行制度の反省を活かした制度設計ができるのかが注目されます。