◆「年金扶養比率」とは?
日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料で高齢者が受給する年金を支える仕組みですが、現役世代の負担割合を表す数値に「年金扶養比率」があります。
これは、年金受給者である高齢者を何人の現役世代で支えているかを示す数値であり、年金財政の状況を表す指標として使われます。比率が小さくなればなるほど、現役世代の負担が重いことを意味します。
2009年度末時点の厚生年金の年金扶養比率は、高齢者1人あたり「2.47」であり、2008年度末と比べて0.13ポイント低下しています。
◆重くなる現役世代の負担
まとまった厚生年金をもらえる高齢者(原則20年以上加入)の数は、2009年度末時点で1,385万人となり、2008年度末に比べて約62万人増加している一方、厚生年金の加入者は、採用抑制やリストラ、非正規社員の増加の影響などにより約20万人減っています。
今後も現役世代の負担は重くなる一方だと考えられており、公的年金の財政見通しによれば、厚生年金の年金扶養比率は、2030年度には高齢者1人あたり「2.09」にまで低下するとのことです。
国民年金の財政状況はさらに厳しく、年金扶養比率は2015年度には「約2」になる見通しです。
◆年金財政はさらに厳しく?
2009年度の厚生年金の給付費は、23兆7,500億円(前年度比約1兆1,500億円増)でした。加入者の減少などで、保険料収入は約22兆2,400億円(前年度比約4,500億円減)となりました。
保険料収入減は、当面、厚生年金の積立金(2009年度末時点で約120兆円)で賄える計算ですが、これにも限界があり、加入者の減少がさらに進めば、負担と給付の見直しが必要となります。
今後も高齢者が増え続けて給付が膨らんでいけば、年金の「支え手」である現役世代の負担はさらに増していくことになります。また、加入者の減少が進めば、年金財政は今以上に厳しさを増すこととなります。
年金制度の抜本的見直しも含め、長期的な対策が求められています。