◆飲酒や薬物の影響で事故を起こした場合の罰則強化
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」という)は、昨年11月に成立し、「通行禁止道路の高速走行」やアルコールや薬物の摂取、特定の病気の影響で「正常な運転に支障が出るおそれのある状態」で運転し人を死亡させた場合に懲役15年以下、人を負傷させた場合に懲役12年以下とする規定が盛り込まれています。
現行刑法の「危険運転致死傷罪」の適用範囲が狭すぎるとして批判があったことを受け、刑法から自動車事故に関連する規定を分離して成立しました。
◆重罰化されるケースとは?
本法制定のきっかけは、栃木県鹿沼市の運転手がてんかん発作を起こし、登校中の小学生6人を死亡させた事故(2011年)や、京都府亀岡市の無免許運転により小学生等計10人がはねられて3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故(2012年)です。
本法における「特定の病気」には統合失調症や双極性障害(躁うつ病)、てんかん、低血糖症、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害等が含まれ、運転に必要な能力を欠いている場合や意識障害、運動障害を再発するおそれがある場合に適用されることとなっています。
また、「通行禁止道路の高速走行」としては、車両通行止め道路、歩行者専用道路、自転車および歩行者専用道路、一方通行道路の逆走、高速道路の逆走等が対象です。
さらに、アルコールや薬物の摂取により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転したケース、アルコールや薬物の影響で死傷事故を起こした場合にその影響をごまかすために事後にアルコールや薬物をさらに摂取したり現場を離れてアルコール濃度などを減少させたりしたケースも処罰の対象となります。
◆企業における対応
企業においては、従業員に対し新法の施行について周知するだけでなく、特定の病気に罹患している従業員の有無の確認や、該当者がいた場合の対応のほか、就業規則、自動車通勤や社用車運転に関する社内規程等の見直しを検討する必要があります。