◆実質賃金は4カ月連続で減少
10月の「毎月勤労統計調査(速報)」によると、パートを含む労働者1人が受け取った現金給与総額(基本給や残業代、賞与などの合計)は、前年同月より0.5%多い平均26万7,935円で、8カ月連続で改善しましたが、賃金から物価の伸びを差し引いた実質賃金指数は2.8%減り、一昨年7月以来、1年4カ月続けて減少しました。
昨年4月の消費税率8%への引上げや円安による輸入物価の上昇もあり、賃金の伸びが物価上昇のペースに追いついていないようです。実質賃金指数は7月には夏の賞与が増えて減少幅が1%台に縮みましたが、8月以降は3%前後のマイナスで推移しています。
◆景気後退がパート労働者の賃金にも影響
現金給与総額の増加幅も8月以降は減り続けています。10月の内訳では、正社員など一般労働者は0.6%増えましたが、パートは0.3%減。パートの労働時間が減ったことが要因とみられています。
厚生労働省は、消費増税後の需要減で企業が生産を控えているうえ、人手不足を背景に人材を確保しやすい短時間勤務での採用を増やしているためとみています。
◆マクロ経済スライド実施で年金も目減り
一方、公的年金の支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える「マクロ経済スライド」が、来年度に初めて実施されることが確実な情勢となりました。
2014年の通年での物価上昇が決定的となったためで、これにより年金の支給水準も来年度、物価に比べて実質的に目減りすることになります。
マクロ経済スライドは、少子高齢化で厳しくなる年金財政を維持するため2004年に導入されました。来年度の抑制額は1.1%ほどが見込まれており、国民年金を満額(月6万4,400円)もらっている人は、物価上昇に対応した本来の増額分から月700円ほど目減りすることになります。
◆今回が初めての発動
マクロ経済スライドは、本来、条件が揃えば自動的に発動されることが法律で決まっていますが、物価下落時には発動されないルールがありました。
制度導入後は長くデフレが続いたことなどから、まだ一度も発動されておらず、今回は経済状況が変わったため初めての発動となります。ただ物価の伸びが大きいため、名目の年金額自体は増える見込みです。
正式な年金額は、来年1月末にわかる2014年の年間物価上昇率を反映させ、厚生労働省が公表します。