◆通達が出た理由
企業は、妊娠・出産、育児休業等を「理由」として、従業員に対して不利益取扱いを行ってはなりません(男女雇用機会均等法9条3項、育児・介護休業法10 条等)。
例えば、妊娠中・産後の女性従業員や子を持つ従業員が、時間外労働や休日労働・深夜業をしない、育児時間を取る、短時間勤務を請求するなどを理由として、解雇や雇止め、減給を行うこと、非正規社員とするような契約内容変更を強要すること等は、不利益取扱いにあたります。
一方、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の相談件数が依然として高い水準で推移していることや、昨年 10 月 23 日に男女雇用機会均等法9条3項の適用に関して最高裁判所の判決(広島中央保健生活協同組合事件)があったことなどを踏まえ、この度、厚生労働省より、「妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達」(1月23日)が出されました。
◆通達の内容
通達では、@妊娠中の軽易業務への転換を「契機として」降格処分を行った場合、原則、男女雇用機会均等法に違反する(=妊娠中の軽易業務への転換を「理由として」降格したものと解され、不利益取扱いにあたる)としています。
また、A妊娠・出産、育児休業等を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反する(=妊娠・出産、育児休業等を「理由として」不利益取扱いを行ったと解される)としており、注意が必要となります。
◆不利益取扱いとならない場合
ただし、@業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき、A契機とした事由または当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、有利な影響の内容や程度が当該取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき等の場合は、違法とはならないとしている点にも注意してください。