◆改革の柱は軒並み先送り
厚生労働省は2月下旬、今国会で法改正を目指す年金制度見直し案を示しました。
年金財政の立て直しや給付水準維持のために検討されていた、「マクロ経済スライド」を物価下落時にも実施できるようにする改正や、基礎年金の保険料を納める期間を5年間のばす見直しは断念し、将来の給付水準低下を食い止める改革の柱が、軒並み先送りされた案となりました。
◆検討されていた改革案とその行方
○年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」をデフレ時も減額可能にする → 先送り(減額できない分は次年度以降に繰り越しとする案に変更)
○基礎年金の保険料納付期間を40年から45年に5年延長する → 先送り
○500人以下の企業のパート社員でも、労使合意があれば厚生年金に加入可能にする → 実施
○国民年金加入者の産前・産後の保険料免除を免除し、財源として保険料に月約100円を上乗せする → 実施
○賃金が大幅に下落したときには、物価でなく賃金に連動して年金額を引き下げる → 実施
○国民年金の保険料を過去10年分納められる特例措置の期限を1年半延期する → 実施
◆給付水準低下と財源への不安は持ち越しのまま
公的年金の給付水準は、経済成長を見込んでも、約30年後には今より2〜3割低くなると見込まれています。
今回の改正の焦点は、年金額の伸びを物価・賃金より低く抑えるマクロ経済スライドをデフレ時にも実施できるようにする改革でした。実施が遅れれば遅れるほど、将来世代の年金が目減りすることになります。
しかし、高齢者の反発で支持率低下を懸念する与党の理解が得られませんでした。厚生労働省は代替策として、デフレ時に減額できなかった分を翌年度以降に繰り越し、インフレ時にまとめて抑制する案を示しました。
また、基礎年金の保険料の納付期間を5年延ばして45年とする改革も目指していましたが、基礎年金の半分は国費負担のため、5年間延長すると約40年後には1兆円強国の負担が増えることになるため、財源確保の見通しが立たず、見送られました。