◆2015年スタートの方針
政府の「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」は、国民一人ひとりに番号を配り、2015年1月に利用を開始する基本方針を明らかにしました。
年金手帳や健康保険証などの機能をICカード1枚にまとめて配布し、利便性を向上させるもので、秋の臨時国会での関連法案の提出を目指しています。
◆「共通番号制」導入でどうなる?
共通番号制導入に伴って配布されるICカードに、年金手帳、健康保険証などの機能を持たせることにより、個人にかかっている医療費などを国が一元的に把握することができます。政府は、自分の過去の医療費や年金給付などをインターネット上で確認できる「マイ・ポータル」の創設も検討しています。
共通番号制度導入により、金融資産や不動産取引などから発生する総合的な所得を国が把握しやすくなると思われます。
◆低所得者への新たな給付の検討
このような正確な所得把握を前提に議論されているのが、減税と現金給付を組み合わせることにより低所得者を支援する「給付付き減税控除」です。これは、減税の恩恵が十分に行き渡らない低所得者に現金を給付する仕組みであり、消費税増税における低所得者対策の一環として位置付けられているようです。
経済界などでは、「消費税増税の環境整備になる」などとして、正確な所得把握に繋がる番号制導入に前向きな声も多いようです。
◆プライバシーへの配慮は不可欠
ただ、国が所得を正確に把握するためには、金融機関などにも番号活用を義務付ける必要があり、それにより民間にも事務コストが発生する可能性があります。企業にも、従業員の給与等を管理している社内の番号を納税者番号に結び付けるシステム構築などが求められる可能性もあり、負担がないわけではありません。
また、番号を利用する範囲が広がれば、取り扱う個人のプライバシー情報も増えるため、情報流出の危険性も広がります。共通番号を利用する範囲や番号の目的外利用を防ぐ仕組みについて、今後さらに議論を重ねることが必要でしょう。