◆相次いで出された判決
先日、「労働組合法における労働者」に該当するか否かをめぐる注目すべき判決が相次いで出されましたので、以下にご紹介します。
◆業務委託契約・出演契約の性質
1つは、「住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結ぶ個人事業主」に関するもの、もう1つは「劇場側と出演契約を結ぶ音楽家」に関するものでしたが、最高裁判所は、個人として働く人の権利を重視して、いずれについても「労働者に該当する」との判断を示しました。
いずれの訴訟でも、一審・二審では、「労働組合法における労働者」とは認められていませんでした。
◆「労働組合法における労働者」とは?
一般に、「労働組合法における労働者」とは、賃金・給料等の収入を得て生活する人のことを言います。
そして、「労働組合法における労働者」であると認められれば、憲法で保障する「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の3つの権利が認められ、非常に大きな意味を持ちます。
例えば、「団体交渉権」が認められれば、労働組合が使用者と交渉することができ、使用者が正当な理由なく労働組合代表者との交渉を拒んでしまえば、いわゆる「不当労働行為」に該当することとされてしまいます。
◆今後、企業が注意すべき点は?
企業が経費削減等の理由から外注化を進めていることにより、個人事業主が増えている状況において、今回の判決が、上記のような個人事業主と音楽家が「労働組合法における労働者」に該当すると認めたことには、大きな意味を持ちます。
もちろん、裁判となった事件にはそれぞれ異なる背景・経緯がありますが、今後、同様の働き方をしている人、会社と業務委託契約を結んで働いている技術者やドライバーなどが「労働組合法における労働者」と認められる可能性はあると言えます。
今後、企業においては、業務委託契約を結ぶ等する際には、上記の裁判例を参考に、慎重を期する必要があると言えるでしょう。