◆裁量労働制と未払い残業代
コンピューター会社でSEとして働いていた男性が、裁量労働制を適用されていたものの、実際には裁量外の労働を行っていたとして、勤務していた会社に対して未払い残業代など(約1,600万円)を求め、京都地裁に提訴していましたが、同地裁は、会社側に約1,140万円の支払いを命じる判決を下しました(10月31日)。
判決理由で裁判官は、裁量労働制が適用されるSEであったが、ほとんど裁量が認められないプログラミングや営業活動等に従事していたと判断して、「裁量労働制の要件を満たしているとは認められない」としました。
なお、この男性は2002年にこのコンピューター会社に就職し、2009年3月に退職しましたが、退職前の5カ月間は、月に約80〜140時間の残業をしていたそうです。
◆双方代理人弁護士のコメント
男性側の代理人弁護士は「裁量労働制を採用していたのに適用せず、残業が認められたのは珍しいケース」とし、会社側の代理人弁護士は「システムエンジニアの職務の実態を裁判所が理解していない。主張が受け入れられず残念」としています。
◆割増賃金の不払い状況
厚生労働省から、全国の労働基準監督署が取りまとめた割増賃金の不払いに関する状況が発表されました。
平成22年4月から平成23年3月までの1年間の間に、残業に対する割増賃金が不払いになっているとして労働基準法違反で是正指導を行った事案のうち、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案をまとめたものです。
◆1社で3億円超の支払いも
この取りまとめによれば、是正企業数は1,386企業(前年度比 165企業増)、支払われた割増賃金合計額は123億2,358万円(同7億2,060万円増)、対象労働者数は11万5,231人(同3,342人増)と、いずれも増加しています。
なお、支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり889万円(労働者1人当たり11万円)で、1企業での支払額については、上位から、3億9,409万円(旅館業)、3億8,546万円(卸売業)、3億5,700万円(電気通信工事業)となっています。